先ほど、孫崎享という外交評論家がテレビに出ていた。東大卒の外務官僚で、イラク大使館やカナダ大使館の公使、そして、防衛大学校の教授まで務めた人物だが、これがまた、手のつけられないほどコテコテの「親中派」である。領土問題で、タレント相手に「自説」を説いていたが、「何だ、コイツは?」と思わせる発言ばかりで、イライラさせられた。
残念ながら、途中から見たのだが、その範囲だけでも、孫崎氏の口からは「売国的発言」が相次いだ。まず、「(戦争にしないために)日本は大人の対応をしなければならない」そうだが、一方(中共)が喧嘩腰なのに、日本だけ「大人の対応」をしなければならないのはどういうことか? と言うか、この種の人間の言うところの「大人の対応」というのは、実は、「何もしないこと」、つまり、「(何をされても)されるがまま」という意味である。何をされても、ただ、「遺憾である」を繰り返すだけの外交である。
たしかに、これまでの日本の外交、すなわち、(外務官僚の言いなりの)政府の対応は、まさに、この「女々しいスタンス」であった。と言うことは、これは「親中派」のごく稀な意見ではないわけで、「親米派」にしろ、何にしろ、この「軟弱な外交スタンス」については共通している、ということである。戦争は極力避けなければならないのは言うまでもないが、最初から「イザとなったら戦争をする覚悟がある」という「(最強の)外交カード」を放棄すれば、交渉にならない、力関係が大きく左右する交渉を有利に進められない、ということが全くわかっていない。
また、孫崎氏は、80年代に、中共とロシアの国境上の「小さな島」の取り合いで40人以上の死者を出した例をあげ、「(領土問題を)棚上げすること」の大切さを力説していた。しかし、それと「尖閣諸島」は、シチュエーションが全然違う。同じ「小さな島」でも、尖閣の場合は、石油利権が絡んでいる。「はい、それでは(以前のように)棚上げしましょう」となる保障はどこにもない。貪欲な中共のことだから、どんな手を使ってでも、自分のものにしようとするだろう。たとえ、日本だけが「棚上げしたつもり」でも、中共は着々と「魔の手」を伸ばしてくるはずである。
それから、孫崎氏は、「対中貿易が対米貿易よりも大きくなっている」という理由から、「日中関係に波風を立てないようにすべき」などという趣旨のことも述べていたが、このスタンスも間違いである。そもそも、「領土問題」がこじれたからと言って、即、貿易関係が全くなくなるわけではなかろう。いや、中共なら、そういう脅しをかけてくる可能性はあるが(注:レアアースの事例もある)、であれば、それこそ、そういう脅しをかけるような国にウエイトを置くこと自体、国の命運を掛けること自体を見直すべきである。
アジアだけでも、中共以外、親日的な国、少なくとも、反日的でない国は多い。日本は、インド、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンなどとの貿易を促進し、中共依存から脱却すべきである。「近いから」と言って、「ヤクザ国家」とつき合う必要は全くない。
なお、孫崎氏は、「今回の騒動で、日本が愛想をつかれ、アメリカやEUの企業が中国に進出し易くなった」みたいなことも言っていたが、これもトンチンカンな指摘である。(今回の騒動で)愛想をつかれたのは、むしろ、中共である。ちょっとしたことで暴動が起こる国、お店や工場が壊され、従業員が身の危険も感じる国には、誰も投資したくなくなる、進出したくなくなるだろう。
孫崎氏の指摘は、どれもこれも、全くの的外れである。しかし、一番憂慮すべきことは、チラッと前述したが、これが、一風変わった「親中派」だけの考えではないことである。日本の外交スタンスが、ずっ~と、今までも、そして、(変わらなければ)これからも、「軟弱外交のまま」だという点である。胆の据わった政治家の主導ではない日本の外交、軟弱な官僚主導の外交が続く限り、日本の国益が損なわれ続けるのである。